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韓国2018年のGDP

韓国銀行(中央銀行)が1月22日発表した2018年の実質国内総生産(GDP、速報値)は、前年に比べ2.7%増加しました。2年連続の3%台成長とはならず、12年(2.3%)以来6年ぶりの低水準にとどまっています。
今回は韓国のGDPの伸び率がが低水準にとどまっている要因について注目してみようと思います。

2018年のGDP

2018年を部門別にみると、政府支出が前年比5.6%増と11年ぶり高水準で伸びています。
民間消費も7年ぶりの大きさとなる2.8%の伸びでした。
一方で、建設投資は4.0%減少し、アジア通貨危機以来20年ぶりの大幅マイナスとなっています。
設備投資も1.7%減と、リーマン・ショックがあった08年以来の低い数値にとどまっており、全体的な伸び率をとどめていると言えます。
業種別の成長率は、製造業が3.6%に鈍化し、建設業は4.2%減と7年ぶりの大幅なマイナスとなっています。
サービス業は2.8%と、4年ぶりの大きな伸びを示しています。
輸出は4.0%増加し、5年ぶりの高水準。輸入も1.5%増加しています。

不動産市場の冷え込み

GDPの伸びをとどめた一つの要因として建設投資の減少があげられます。
ソウル市が運営するソウル不動産情報広場によると、1月のソウルのマンション取引件数(申告件数基準)は16日現在915件。一日平均57.2件で、前月(計2304件)の一日74.3件に比べ23.1%減、前年同月(計1万198件)の一日329件に比べて82.6%減少していると言います。
1月の取引件数の推移を見ると、2013年1月(1196件)以来6年ぶりの最低水準となる見込みです。
この2013年はグローバル景気沈滞の余波と再建築規制、低価格マンション供給などの影響で住宅取引市場が冷え込んだ時期であり、この2013年よりも低い数字は異常な事態であると言えます。
専門家は今年の取引件数が当時の水準まで減少する可能性があるとみています。
ソウル・江南(カンナム)地域を除いた韓国の住宅市場はすでに厳しい現状にあり、伝貰価格に対し売買価格が下回るいわゆる「空き缶住宅」が首都圏隣接地域まで北上中だと言います。
オフィステル請約が最初から1件もない所が現れるほど市場が冷え込んでおり、競売市場に出される売り物件も増える傾向です。

半導体輸出の鈍化

韓国最大の企業である「サムスン電子」は約2年ぶりとなる大幅減益を記録しています。
サムスン電子は営業利益の約3分の2を稼ぐ半導体事業を柱としていますが、アメリカと中国の間の米中貿易摩擦の影響により、半導体の輸出が減少しており、これによりサムスン電子の減益につながっています。
米中貿易摩擦が韓国経済に与える影響は大きいものです。中国では、愛国心を強調するために自国製のスマートフォンを買う動きが強まっており、アメリカのアップル社のiPhoneの販売が伸び悩んでいます。
サムスンはスマートフォンメーカーとしてはアップルのライバルでもある一方で、アップル社は電子部品を供給するお得意さまでもあることから皮肉にも業績悪化につながっています。
なた、サムスンのみならず、LG電子も昨年10~12月期の営業利益は79・5%減と大幅減益に見舞われており、電子メーカーの不振が韓国経済に与える影響はとても大きいと言えます。

大企業依存


サムスンの半導体輸出が減少していることが韓国全体のGDPの伸び率の減少につながっていると載せましたが、サムスンに限らず、韓国経済は大企業への依存度が非常に高いと言えます。
経営成果評価サイトCEOスコアは、日米韓3カ国の昨年の売り上げ上位10社の年間売上額を調査していますが、その結果、韓国の売り上げ上位10社の年間売上額は6778億ドル(約75兆円)で、GDP(1兆5308億ドル)の44.3%を占めると発表しました。
これはサムスン電子とヒュンダイ(現代)自動車の2社の売り上げだけで、GDPの20.5%に上ると言います。
日本とアメリカの場合を参考にしてみると、日本の上位10社の売り上げは1兆1997億ドルで、GDP(4兆8721億ドル)の24.6%。アメリカは2兆2944億ドルで、GDP(19兆3906億ドル)の11.8%です。
この数字からも韓国の44.3%という数字は異常な数字だと言えます。
また、韓国の上位10社のGDP対比の売り上げ規模は、2015年の41.5%から2017年の44.3%と、2.8%ポイント上昇しています。
企業別に見てみると、サムスン電子の売り上げは2015年の1704億ドルから昨年2242億ドルで31.6%も伸びており、GDP対比規模も14.6%と2.3%ポイント増加しています。
ヒュンダイ自動車が902億ドル(GDP対比規模5.9%)で2位。以下、LG電子(575億ドル、3.8%)、ポスコ(568億ドル、3.7%)、韓国電力公社(560億ドル、3.7%)までが上位5社となっています。
そして起亜自動車(501億ドル、3.3%)、ハンファ(472億ドル、3.1%)、現代モービス(329億ドル、2.1%)、サムスンディスプレイ(321億ドル、2.1%)、ハナ銀行(309億ドル、2.0%)までが上位10社です。
上位10社をグループ別に見ると、ヒュンダイ自動車、起亜自動車、現代モービスなどヒュンダイ自動車グループが3社で最も多く、ムスングループは、サムスン電子とサムスンディスプレイの2社が名を連ねています。
この結果からも韓国のGDPは大企業、そして自動車メーカーと電子メーカーへの依存度が非常に高いと言えます。

文大統領への批判の声

韓国では、最低賃金の引き上げで中小企業などが雇用を手控えるなど、ムン・ジェイン(文在寅)政権の経済運営に不満が高まっていて、一時80%を超えていた支持率は40%台に下落しています。
文大統領は1月10日に行った年頭の記者会見で「今年は、政府の経済政策が正しい方向だと実感できるようにする」と強調しましたが、新たな具体策は示されておらず、韓国国民の間で不安や不満が広まっています。
韓国の失業率やGDPの低迷などの問題にどのように対応していくか今後も文政権には課題が多そうですね。

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