2018年12月、韓国・聯合ニュースは「韓国20代の失業率が日本の2倍以上になった」と報じました。
記事によると、韓国の2017年の25~29歳の失業率は9.5%で、日本(4.1%)の2倍以上を記録したということです。
20~24歳の失業率も韓国が10.9%、日本が4.7%と2倍以上の数字となっており、アジア通貨危機以降で最悪の数字であることが明るみになりました。
特に若年層の失業率の高さが深刻となっている韓国。
今回は韓国で年々高まる失業率の背景や今後について注目してみようと思います。
韓国での失業率の高まりは、政府による政策による影響が大きいのではないかと言えます。
近年、行われた政策についてみてみます。
2017年5月に文在寅(ムン・ジェイン)政権は、格差是正を公約に掲げ発足しました。
最低賃金の引き上げも文大統領が公約した大きな政策の一つです。
最低賃金は、18年に16.4%、19年も10.9%の引き上げを既に決定しており、2年間で30%近い非常に急激な引き上げとなっています。
韓国の最低賃金は全産業一律制となっており、最低賃金法に従って最低賃金委員会で決定されます。
これまでも毎年10%以上引き上げられてきたが、2年で30%近い引き上げは異例のことと言えます。
2019年の最低賃金は昨年比10.9%増加の8350ウォン(約825円)となり、これは日本の最低賃金を上回ると言われます。
韓国では法律で1週間に平均1回以上の有給休暇を与えなければならないと定められており、「週休手当て」が支給され、これを含めた実質最低賃金は1万30ウォン(約991円)となり、日本のどの地域よりも多くなるためです。
日本では最低賃金は47都道府県ごとに物価と所得を考慮して決まるため、地域で賃金差がありますが、韓国では地域ごとの最低賃金の差はありません。
雇用改革に力を入れる文政権が最低賃金の引き上げと共に進めている大きな改革の一つが「働き方改革」です。
この働き方改革により、韓国では残業時間を含めた1週間の労働時間の上限を従来の68時間から52時間に制限することを柱とする改正勤労基準法(日本の労働基準法に当たる)が7月1日に施行されました。
これが「週52時間勤務制」です。
労働時間の上限が適用されるのは、従業員数300人以上の企業や国家機関・公共機関で、違反した事業主には2年以下の懲役あるいは2千万ウォン(約200万円)以下の罰金が科されます。
但し、施行から半年間は試行期間とし、罰則が猶予されています。
「週52時間勤務制」は、2021年までには中小企業にも段階的(50人以上~300人未満の事業場は2020年1月まで、5人以上~49人未満の事業場は2021年7月まで)に拡大・適用されることが決定しています。
韓国政府が急速な改革を進めている雇用環境。
韓国政府が見込んでいるシナリオはというと、 「週52時間勤務制」により、一人当たりの勤務時間が短くなり、人手不足が発生する。企業は人手不足を補うため、追加雇用をする。
その結果、就業者数が増え失業率は低下する。
さらに、最低賃金の引き上げにより、貧困層を中心に所得が上がる。これにより格差是正が見込める。
上がった所得は消費に回されるので、景気が良くなり経済成長が促される。
政府はこういった見込みで改革を進めています。
では、実際に雇用環境の変化はどのような結果を生み出しているのか、注目してみます。
さて、一人当たりの労働時間を短くすることで企業は人材不足になり、追加雇用を生み出すと韓国政府は見込んでいましたが、実際にはそのような追加雇用を考える企業は少なく、単に業務時間を短縮することで対応しているところが多いようです。
そのため、失業対策にもならず、単純に既存の労働者の残業代が少なくなることで、かえって所得減の効果を与えているようです。
最低賃金の引き上げについても特に中小企業は最低賃金を引き上げたことによる経営の悪化を免れるために、雇用時間や雇用自体を削減する人員削減に取り組むようになり、実際には労働者側の勤務時間が短くなるなど逆転の効果が出てしまっています。
コンビニエンスストアやチキン店などの小売店では人件費上昇分を吸収するため、エアコンをつけないなどの光熱費削減を模索したり、アルバイトを一人減らして自分の睡眠時間を削って働く、というように雇用主自身の負担が大きくなっています。
中小企業の多くも。人件費負担を負い切れない経営者が社員のリストラや本社の海外移転、あるいは廃業まで検討しており、改革への批判の声が高まっています。
一方で、従業員からは勤務時間が強制的に短くなってしまったり、リストラにあってしまったなど、最低賃金の引き上げによる賃金上昇以上に雇用自体が少なくなるという事態になってしまい、今後も十分な賃金が稼げるのか不安の声があがっています。
若年層からは「就職どころかバイトすらない」という不満も強まっています。
韓国でのこうした厳しい失業率を目の前にして、特に若年層を中心に日本への就職を考える人も増えているようです。
韓国企業は、採用に際して学閥や資格などの入社時のスペックを重視します。
新卒採用時に、学校での成績、資格、英語運用能力、社会貢献活動への参加頻度など、学生時代の経験が採用基準に大きく影響します。
特に韓国人学生の英語運用能力は総じて高く、TOIECスコアで高得点を修めても、就職活動での差別化につながりません。
一方、日本企業は、新卒者の入社時のスペックは重視せず、学閥や保有資格よりも入社後の長期的な潜在力を重視します。
また、国籍などによる差別もなく、新卒の外国人にも終身雇用の機会を与えるなど、日本人と変わらない待遇で迎えます。
こういった面でも単に働き口としてだけでなく、「新人を育てていく」という日本企業の体制が韓国の若者に魅力的に映っていると言えます。
こうした韓国国内の失業率の高さを解消させるために韓国では「Kムーブ」と称し、若者が韓国国内から海外に目を向けて、海外での就職先が見つけられるように力を入れてサポート体制を整えており、日本企業へも目が向けられ、「韓日つなぎプロジェクト」を推進しています。
韓国国内では非常に厳しい就職難にさらされている韓国の若年層ですが、実はとても優秀な人材だと言えます。
というのも、韓国では、IT産業の人材育成に国を挙げて取り組んできたため、SE(システムエンジニア)を目指して情報学を専攻する韓国人学生は多く、ITリテラシーは日本よりはるかに高いといえ、さらに、韓国は日本よりも早く英語教育が始まり、学校外でも英語学習が盛んであり、英語力をはかる試験の平均点数においても、英語圏への留学生数、英語圏大学への正規入学者数においても、韓国は日本を上回っています。
日韓で目を向けてみると実は「韓国の就職難」と「日本の人材不足」実は非常にマッチしていませんか。
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