海外での現地法人設立など海外でのビジネスを検討されている方にとって、現地の社会保障制度を理解することはとても重要なことかと思います。
日本でももちろん社会保障制度は整っていますが、社会保険は国によって本当に多くの違いがあります。
韓国も様々な社会保障制度があります。
社会保障制度は社会保険制度、公的扶助、社会福祉サービス、社会福祉関連法、その他社会福祉制度などに分けることができます。
韓国でビジネスを検討されている方にとって重要なのは社会保険制度化と思います。
日本と同様に、事業主にとって社会保険は雇用により給料に追加して発生するコストにあたります。
今回はこの韓国の社会保険制度について注目してみようと思います。
韓国でも、日本と似たような社会保障制度が数多くあります。
今回は、韓国企業で働く上で労使ともに不可欠と言える各種保険についてご紹介します。
韓国では、社会保険制度として
1.国民年金
2.国民健康保険
3.雇用保険
4.産業災害補償保険(労災保険)の4つの保険が施行されています。
この4つの保険は韓国ではいわゆる4大保険と呼ばれており、これらの保険は政府の管掌で加入が義務付けられているものです。
国民年金保険は、引退後最低限度の生活を支える保険として、所得のある国民を対象に国が加入を義務付けている保険です。
一定の年齢(老齢年金の受給開始年齢:1969年以降に生まれた人は65歳、早期老齢年金の受給開始年齢:1969年以降に生まれた人は60歳)から一生年金を受給するためには少なくとも10年(120か月)以上保険料を納付しなければなりません。
20年(240ヵ月)納付したときに受け取ることのできる金額を基準として、これまで納付した基本年金額と物価上昇率、扶養家族の年金額、利子などから算出された年金額を受け取れます。
もし納付期間である10年(120か月)を満たしていない場合は、年金の代わりに脱退一時金に当たる「返還一時金(納入した金額+利子)」を受け取ることができます。
韓国で会社に勤める場合、国民年金保険料は所得の9%(雇用主4.5%、本人4.5%負担)です。フリーランスの場合は、全額個人負担となります。
外国人でも韓国人と同様に国民年金の受給要件を満たした場合は国民年金法で定めている年金すべてが受給できます。
ただし、一部の社会保障協定や相互主義が適用される国、そして在留資格のE-8,E-9,H-2を持つ外国人加入者に限っては帰国する際返還一時金の受給ができます。しかし、日本人の場合は社会保障協定や相互主義が適用されないため在留資格のE-8,E-9,H-2を持つ人だけが返還一時金の受給が可能となります。
日本でも国民年金制度がありますが、日本と韓国は社会保障協定が締結されています。
これにより、日本の事業主から韓国の支社などへ派遣された場合(5年以上)や現地の企業で採用された場合は、日本の社会保障制度への加入は免除され、韓国の社会保障制度に加入することになります。
つまり、保険料を二重に負担しなくて済むようになっています。ただし、派遣期間が5年を超えない場合は、引き続き日本の社会保障制度のみに加入し、韓国の社会保障制度は免除されます。
この「保険料の二重負担防止」については、派遣か現地採用か、また、働く期間によって変動しますので、事前に確認の必要があります。
韓国国民であれば誰もが加入しなければならない健康保険は疾病や負傷などによる治療費の負担を緩和するための社会保障保険です。
所得に応じて保険料を納付し、給付は同じく受けられるのが特徴です。
韓国における健康保険の保険料算定方式は職場加入者と地域加入者で異なります。職場加入者の場合は健康保険料として所得の6.12%(勤労者3.06%+使用者3.06%)、長期療養保険料として健康保険料の6.55%(2016年基準)を納付します。
一方、地域加入者の保険料算定方式は世帯の年間課税所得が500万ウォンを超えるか超えないかによって異なります。
外国人登録を済ませた外国人は健康保険に加入するのが義務となっており、給付は韓国人と同じく受けられます。ただし、一部の在留資格(D-7、D-8など)を持つ外国人は加入除外を申し込むこともできます。
健康保険に加入すると、風邪を引いたり、通院したりする場合も、医療費の30%を負担することで医療サービスを受けられます(ただし、病院や治療内容によって変動する場合があります)。
雇用保険は、失職や退職などで所得が途絶えた場合、生活維持のために支給される社会保障保険です。
韓国では勤労者一人以上を雇用するすべての事業が適用対象となり、加入が義務付けられています。
ただし、満65歳以上で新規採用された人や一か月間で60時間未満働く人、D-7やD-8の在留資格を持つ外国人勤労者の場合は適用が除外されます。そして雇用保険に加入している勤労者は在職期間中または退職後様々な給付を受けることができます。
在職中は職業能力開発訓練を受講する場合給付金が支給されるうえ、産前産後休業による出産手当金及び育児休業給付金などを受給することができます。
退職した後は再就職するための教育訓練給付金の受給ができるうえ、特定の事由により離職した場合は失業手当の受給ができる資格が与えられます。
勤労者は毎月所得の0.65%を、雇用主は最低0.9%(業種や従業員数により引き上げられることもある)を保険料として納入し、加入期間を問わず(失業手当は除く)いろいろな給付を受けることができます。
ただし、失業手当を受給するには雇用保険への加入期間が最低180日以上、つまり約6か月以上働かなければなりません。
また、失業手当は自ら退社した場合は受給できず、会社の経営悪化などによる「非自発的退職」をした場合に限って受給が可能となります。失業手当の給付日数は退職当時の年齢と雇用保険の被保険者であった期間等により最低90日から最大240日までです。失業手当の受給ができる期間は退職した日の翌日から12か月以内で、給付金額は原則として退職した日の直前の3か月に支払われた平均賃金の50%で上限額と下限額が定められています。
業務上の事由によって負傷、疾病、傷害または死亡したときに、各種治療費や死亡保険金などを保障してくれる社会保障保険です。
労災保険においては勤労者を一人でも使用する事業場であれば自動的に加入対象となり、保険料は全額事業主負担とされているので勤労者の負担は全くありません。
労災保険において最も重要なのは労災に該当するかどうかを判断することで、業務上災害により勤労者が負傷した場合、疾病にかかった場合、障害が残った場合、死亡した場合等が対象となります。災害の認定基準としては勤労契約による業務中に起きた事故、施設物の欠陥や管理不備による事故、事業主が提供した交通手段による通勤中の事故、事業主が主催する行事の準備中に起きた事故などを挙げられます。
韓国での社会保険についてまとめました。
企業側にとってはひとつのコストともいえる社会保険ですが、労使ともに安心して韓国での生活を送るためにとても必要な制度です。
社会保険にはとても細かいルールがあるため、特に企業側は正確な知識が必要となります。
弊社では韓国の社会保険制度についてもサポートさせていただきます。
ぜひ、お気軽にご相談ください。